先月、私が13歳の時に初めて訪れた外国の土地、サンクトペテルブルグで行われた「ワガノワ ・プリ」のコンクールを見てきました,その記事を添付いたします。写真付きで見る場合は下のリンクで見てくださいね。
http://www.chacott-jp.com/magazine/news/concours/37.html
針山愛美
日本人が見事に3人受賞した第7回ワガノワ国際バレエコンクール詳報
世界最高のバレエ学校として知られる、ロシアのサンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ・アカデミーが主催した、若手の登竜門のバレエコンクール「ワガノワ国際バレエコンクール」(ワガノワ・プリ)で、日本人3名が入賞しまし
た。
このコンクールは、278年の歴史を誇るクラシック・バレエ学校の名門ワガノワ・バレエ・アカデミーが1988年に第1回を開催し、今年で7回目を数えます。
ワガノワ・バレエ・アカデミーはよく知られているように、ニジンスキー、パブロワ、バランシン、ヌレエフ、マカロワ、コルパコワ、バリシニコフ、ルジマートフ、ヴィシニョーワなど世界で活躍するダンサーや振付家を数多く輩出してきた歴史を持っており、バレエダンサーを志す人たちの憧れの的でもあります。
1934年にバレエ教師となったアグリッピーナ・ワガノワは、それまでの伝統を土台に各国の技法を融合させた独自のバレエ教授法を確立しました。それは”ワガノワ・メソッド”と呼ばれ、今日でも世界のバレエ学校で採用されていますし、優れたバレエの教授法の代表的存在です。
今回は、ワガノワの最後の教え子であり、元キーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)のプリマとして活躍したイリーナ・コルパコワが審査員長をつとめました。
今年は13か国から19歳以下のバレエダンサー、男女合わせて55人が参加しました。
ワガノワ・バレエ・アカデミーからの参加者が半数以上で、特にジュニア部門では、外部参加者は日本から参加した大貫ちひろ(Yダンスエンターテイニングスタジオ)1人のみ。他は全参加者がワガノワ・バレエ・アカデミーの生徒で、まさに如何にワガノワ・メソッド、クラッシックの基礎をしっかりと身についているかが重要視されるコンクールでした。日本からの出場者は13名、そのうちワガノワ・バレエ・アカデミー以外の外部からの参加者は、高森美結(ハンガリー国立バレエ学校)、千野円句(ボリショイ・バレエ学校)、大貫ちひろ、森川真央(共にYダンスエンターテイニングスタジオ)の4名のみでした。
「ワガノワ・プリ」の1次審査は、クラスレッスンでした。
コンクール初日の24日は、レッスン審査の振付を覚えるため、各グループに分かれてのクラスレッスンのみでした。私がボリショイ・バレエ学校在籍時代の卒業試験を思い出すような難しい振付で、ワガノワメソッドが身に付いていないとついていけないアンシェヌマンでした。
レッスン審査は25日。
1時間30分のレッスン審査は、バーレッスンから始まりセンターレッスン、そして女子はポワントの審査まで、そして最後にはフェッテやピケなどを1人ずつ行いました。すべて隠しようがなく、基礎をしっかり身につけ、テクニックも身に付いていないとついていけないレッスン審査は一人ひとりの長所、短所があからさまに見えました。
結果55人が24人に絞られました。
レッスン審査を通過した人はヴァリエーション審査、決戦に進むことができます。ジュニアの15歳、16歳の生徒たちのレベルが本当に高く、これから楽しみなダンサーばかりでした。
27日、サンクトペテルブルクのエルミタージュ劇場で決戦が行われ、24人が3部門に分かれて演技を披露しました。
エルミタージュ劇場は、男の子たちにとっては少しステージが小さかったですが、その中でどう踊るかもプロを目指す若いダンサーにとって良い経験になったと思います。ソロで出場のダンサーは2つのヴァリエーションを規定の中から選び踊ります。
ペアでの出場も可能ですが、審査はソロ部門もパ・ド・ドゥ部門に分けずに行われました。
決戦も予選と同じく一般の観客には公開されず、招待された人たちだけが見守る中で行われました。
日本から出場したダンサーたちは安定した踊りを見せ、それぞれがすばらしいテクニックを披露し、堂々とした舞台を見せてくれました。
その結果、女子ジュニア部門で、埼玉県出身でワガノワ・バレエ・アカデミー在籍の島田陽衣が、見事に1位に輝きました。
また、女子ジュニア部門の2位に、東京都出身でワガノワ・バレエ・アカデミー在籍の吉江絵璃奈が、男子部門では、モスクワのボリショイ・バレエ学校在籍の千野円句が2位となり、日本人3人が入賞しました。
島田陽衣は、『ラ・バヤデール」の影の王国のシーンより第一ヴァリエーションと、オダリスクのヴァリエーションの2曲を踊りました。綺麗で華奢な容姿とチャーミングな笑顔が印象的で、ピルエットに特に安定感があり、オダリスクでは抜群テクニックをアピールしました。
吉江絵璃奈は、「ダイアナとアクティオン』のダイアナのヴァリエーションとオダリスクのヴァリエーションを踊りました。回転に抜群の安定感がありびくともしない軸の持ち主、ジャンプも高くダイアナが特に印象がに残りました。
千野円句は、『ジゼル』よりアルブレヒトのヴァリエーション、『白鳥の湖』からジークフリードのヴァリエーションの2曲を踊りました。教則本から出て来たような正確なテクニックと長身を生かしたノーブルでエレガントなダンサーで、アカデミックな模範とも思えるような踊りでした。
島田陽衣とともにジュニア女性部門1位のMaria Bulanovaは、未だ15歳ですが、オダリスクのヴァリエーションと『ライモンダ』よりヴァリエーションを踊りました。名教師リュドミラ・コワリョーワに学んでいて、感受性豊かな踊りが将来が楽しみなダンサーでした。
ジュニア女性部門2位のSvetlana Sevelievaは『パキータ』のヴァリエーションと「フロリナ王女」のヴァリエーションを踊り、とても美しいラインが印象的でした。
男性部門1位のLee Sangimとシニア女性部門1位のSoobin Lee(ともに韓国国立バレエ学校)は、『ジゼル』より2幕のパ・ド・ドゥを踊りました。ワガノワ・メソッドをしっかり身につけ、軸が揺るがないそして優雅な踊りを見せ、ミスもなく納得のいく踊りでした。
ともに2位を獲得したEgor Gerashchenko(ワガノワ)Eleonora Sevenard(ワガノワ)は、「黒鳥のパ・ド・ドゥ」を踊り、強靱なテクニックを見せつけシニアの貫禄を印象付けました。
最終日29日のガラ公演は、マリンスキー劇場で行われました。
ワガノワ・バレエ・アカデミーの校長ニコライ・ツスカリーゼが冒頭の挨拶をし、その後審査委員長のイリーナ・コルパコワが総評を語り、「マリインスキー・バレエとワガノワ・バレエ・アカデミーは、世界一のバレエメソッドの持っている世界一のバレエ学校、その伝統を引き続き大切に守っていきたい」と語りました。
ガラ公演の第1部では、1位から3位までの受賞者と、観客賞受賞者が踊り、第2部ではワガノワ・バレエ・アカデミーの生徒たちによる、『フェアリー・ドール』が上演されました。このコンサートは、インターネットや、ロシアのテレビでライブ中継されました。
次回開催日はまだ決まっていないということですが、この素晴らしいコンクールがまた、華やかに開催されることを願います。
最終成績
◎ジュニア女子
1位 Maria Bulanova(ワガノワ)、島田陽衣 (ワガノワ / 日本)
2位 Svetlana Sevelieva(ワガノワ)、吉江絵璃奈(ワガノワ / 日本)
◎ディアナ・ヴィシニョーワ賞
Anastasia Smirnova (ワガノワ)
◎シニア女子
1位 Soobin Lee (韓国国立バレエ学校)
2位 Eleonora Sevenard(ワガノワ)、Egor Gerashchenko(ワガノワ)
3位 Seon Mee Park(韓国国立バレエ学校)
◎男子
1位 Lee Sangim(韓国国立バレエ学校)
2位 千野円句(ボリショイバレエ学校/日本)、Egor Gerashchenko(ワガノワ)
3位 Ervin Zagiddulin(ワガノワ)
◎ベストパートナー Arsentiy Lazarev(ノボシビルスク)
◎観客賞 Nikita Boris (ワガノワ / USA)
◎ワガノワ・バレエ・アカデミーへのスカラシップ
高森美結(ハンガリー国立バレエ学校/日本)
Anamarija Markovic (クロアチア)
一次審査通過者(ワガノワ・バレエ・アカデミーはワガノワと表記)
◎シニア女子
Anamarija Markovic (クロアチア)
Seon Mee Park(韓国国立バレエ学校)
鈴木花音(ワガノワ / 日本)
高森美結(ハンガリー国立バレエ学校/日本)
Valerie Gomez de Cadiz(ワガノワ / スペイン)
Soobin Lee (韓国国立バレエ学校)
Eleonora Sevenard (ワガノワ)
Vlada Borodulina (ワガノワ)
◎ジュニア女子
Anastasia Smirnova (ワガノワ)
Maria Bulanova (ワガノワ)
島田陽衣(ワガノワ/ 日本)
Svetlana Sevelieva (ワガノワ)
Nikita Boris (ワガノワ / USA)
吉江絵璃奈(ワガノワ / 日本)
Anastasia Nyukina (ワガノワ)
中島実紀(ワガノワ / 日本)
Maria Petukhova (ワガノワ)
◎男子
小野真之介(ワガノワ/日本)
Ervin Zagiddulin ワガノワ)
千野円句(ボリショイ・バレエ学校/日本)
Arsentiy Lazarev(ノボシビルスク)
Lee Sangim (韓国国立バレエ学校)
Egor Gerashchenko(ワガノワ)
Velery Argunov(ボリショイ・バレエ学校)
審査員長
イリーナ・コルパコ
審査員
ジャンナ・アユポワ(ワガノワ・バレエ・アカデミー芸術監督)
アマンダ・ベネット(スイス)
Dinna Bjorn (デンマーク)
バレンチーナ ・カズロワ(USA)
Hyun-woong Kim (韓国 )
マリーナ・レオノバ(モスクワ)
斎藤友佳理(日本)